シルクの魅力と可能性 / ネパール及び日本の養蚕とシルク生産
ORIENTAL GATE は、ネパールに直営工場を運営しています。ネパールは人口に占める割合では農業従事者が一番多い国です。山が多い厳しい自然環境で、海もない陸の孤島のため、道路もインフラも整っていません。そのため世界一開発が難しい国とも言われています。今日本に沢山の出稼ぎ労働者が来ていることでも分かるように、国内での雇用を産む産業が育つにはとても難しい環境にあります。
それでも昔から様々な方面からネパールという国に支援や投資が行われてきました。その中で、JICAのネパール政府に対する支援である、養蚕振興・普及プロジェクトが2006年から2011年まで行われていました。ちょうど私がネパールに在住していた時と重なるのですが、専門家の方とお会いしたこともあり、とても興味を持っていました。残念ながら、打ち切られてしまったのですが、その理由は普及に関して、その先は民間企業の領域になるからだと認識しています。
まさに、支援の限界がここにあります。養蚕農家、製糸場が自ら世界のマーケットと繋がることが理想ですが、それまで永遠と支援することは出来るはずもありません。
その先を担いたいという思いが、私がORIENTAL GATE を立ち上げた理由の一つでもあります。生産者とユーザーを結ぶという役割を果たすのは企業しかありません。国際支援や伝統文化にも関心があるデザイナーとでも言いましょうか、そんな私の使命でもあると思っています。
シルクという繊維がいかに素晴らしく、特別なものかという説明は、また後日に置いておきますが、私は今シルク産業について全体的に調べています。先日、世界遺産でもある群馬県の富岡製糸場に行ってきました。百聞は一見に如かずとはまさに本当で、実際に行ったことで規模感や当時の指導者の的確な判断や技術者の素晴らしさなどを、肌で感じることが出来ました。明治5年から昭和46年まで稼働していたという大規模な製糸場。同じ製糸機は、同じ群馬県の碓氷製糸で現在でも使われ、日本産のシルクの伝統を守っています。
ネパールでは、JICAの養蚕振興プロジェクトの専門家から教わった養蚕技術を守り、それを他の地域に伝え、さらに規模を大きくしようと頑張っている一家があることが分かったため、コロナ前の2019年の末までやり取りをしていました。ネパール産のシルクの布を作ることが出来ないか。そしてその布を使いたいとの思いは今でも変わりません。コロナを経て、ようやく再スタートです。来月は約一年振のネパール出張があります。ネパールでのシルク養蚕のその後を調査してみたいと考えています。
また、日本のシルク産業も、シルクに目を向ける企業を切実に求めていると知りました。自国の伝統、文化を守ることも本当に喫緊の課題だと思います。弊社でも将来そのことに貢献することが出来ればと漠然と考えています。
シルクは高価ですが、やはり肌触り、柔らかさ、保温性、放湿性に優れており、間違いなく一年を通じて一番着心地が良い素材です。まさに「繊維の女王」です。この素材の良さが再認識され、高くても良いものを大切に着る文化が広まり、世界中で需要が増えていったら嬉しいなと思っています。