世界が求めるスローファッション?

11月も下旬に入りました。現在、東京谷中のザ・エスノースギャラリーに於いて年内最後の展示会を行なっています。2017年以降、ORIENTAL GATEを立ち上げる前から出展させていただいている場所ですが、今年ほど外国人のお客様が谷中銀座を歩いている年はなかったと思います。
ギャラリーにも時々外国人観光客が来られる中で、昨日はイタリア人の若めのカップルがご覧になりました。お買い上げにはならなかったのですが、こういうのはイタリアでも絶対売れると私に感想を伝えて下さり、弊社のブロシュアを持って帰られました。(日本語ですが)昨年もフランス人の方にお買い上げいただいたこともあります。その時、手紡ぎ手織のコットンをBeautiful と仰っていただいた事をとても嬉しく思いました。
そしてよく考えると、私がカトマンズ在住の頃に服を販売していたのは主に西洋人でしたし、帰国の際は逆に日本人に受け入れられるのかを心配していたぐらいだったのです。最近は、百貨店ポップアップが当たり前になって忙しく飛び回っておりますが、ふとそんな原点を思い出しました。
日本の古い街並み、自然と調和した風景。東京の谷根千と呼ばれるエリアには古き良き日本の面影が沢山残っています。そこを歩く西洋人には憧れや尊敬を持った眼差しを感じることができます。これほど世界に注目される日本の伝統と文化に、私たち日本人はもっと誇りと自覚を持つべきではないかと思わされます。
特に手仕事や職人技は、私が何故か子供の頃から興味がある分野なのですが、日本の養蚕や絹その他の伝統技術のことも一人の日本人として、経営者として、先々に関われたらと願っています。
コロナ前と後は、様々な物事が変化していますが、人々の価値観がより自然志向になってきたと感じています。弊社が作る自然素材100%の生地の、軽さや肌触りという機能性はもちろんですが、その生産工程についてもご賛同いただくことが増えてきました。ネパールで現地の職人を直接雇用し、手仕事の技法を使って一貫してモノづくりをしていること。伝統と現地のペースを守り続けていること。その実績が積み重なってきました。

「もっと効率的に、速く」もっと量を沢山作ることは、もちろん少しは目指していますが笑、実際のところネパールではあまりうまく行きません。布作りから行う上で、自然乾燥、人の手で糸車を回す昔ながらの方法以外に選択肢がないという理由もあります。そして、文化(宗教的儀式、お祭り)や人間関係を大切にする国柄であること。雨季は長く、寒さは厳しく、沢山の障害が日常にあり、対処しているうちにあっという間に一年は経ってしまい、毎年同じようなペースで生産を続けています。

効率良く利益を生み出す。本来の資本主義の法則に則れば、ネパールでモノづくりをすることはリスクしかありません。実際、ネパールにはフェアトレード以外、大手のアパレル会社は存在しません。しかし語弊を恐れずに言うと、ネパールほど、資本主義に毒されていない国はないかもしれません。ネパールを変えようなどということは無理だし、むしろ変える必要はないのだと思います。効率やスピードは、消費の速度も加速させるものでしかないのかもしれません。
生産も消費もスローであることを目指すのが、私たちが掲げるスローファッションです。価値観の変化は、追い風だと感じています。ものは溢れていますが、本物の手仕事を探すことは本当に難しくなりました。お客様の求められるもの、満足はできるものは結局のところ、量ではなく質にあると実感しています。
そして今、改めてスローファッションの時代だと感じます。「優しさや癒し、温もり」という置き去りにされてきた価値を思い出す時代です。質の良い自然素材は本当に長持ちします。正真正銘、生産も消費もスローなファッション。その価値はますます重要になってくるように思います。

貴重な手仕事の文化を、これから世界のスタンダードの一つとして甦らせることが出来れば。そんな夢をより多くの方々と共有し、世界に広めていけたらと思っています。

年内最後の展示会。ぜひお越しください。
■ 『Nature and Creation featured by ORIENTAL GATE vol.8』
会期:2023年11月18日(土)〜11月26日(日)
*20日(月)24日(金)は休業日
時間:平日 13時〜18時
土日祝 12時~18時
会場:ザ・エスノースギャラリー 東京都台東区谷中3-13-6