ネパール出張報告 / ネパール産シルクの商品が完成しました!
先日、足掛け10日間のネパール出張から帰ってきました。日本の暑さに比べると過ごしやすい気温で、夜は20度昼は28度。雨季のネパールは毎日曇り時々雨でした。ネパールのカトマンズに隣接するパタンという市に、ORIENTAL GATE の直営工房があります。オフシーズンのこの時期にすることは、毎日工房でパターンを引き、サンプルを作り、新しい商品の叩き台を作ることです。今回は事前に用意して行ったパターンも多く、沢山のサンプルを持って帰ってきました。
その中でも一番の課題であった、手紡ぎのシルク糸を贅沢に使用したコートが出来上がったのです。まずはそのよこ糸で使用しているシルク糸をご覧ください。
伝統的な糸車を使いシルクの繭からダイレクトに糸を紡ぐ方法で作られたシルク糸は、太いところと細いところの差が激しい、かなり味のある糸でした。この良さを引き出すにはどうしたら良いろうか。昨年の出張で様々な種類の糸と布のスワッチを持ち帰りました。詳しくはブログをご覧ください。
本格的に布を作り始めるまで数ヶ月時間がかかりましたが、最終的に生糸の特徴としての軽さと暖かさを活かした厚手の布を作ることにしました。しっかりと厚手で、シルクを使うことによって軽くて暖かい高級感のあるコートができれば最高じゃない?!と。縦糸は、強さを補強するために細い綿糸を使いました。そしてこの太い手紡ぎの絹糸を使用して、手仕事の風合いたっぷりのオリジナルの布が出来上がりました。(コートのお披露目は後日のブログと展示会会場で!)
もう一つは、座繰りという繰糸方法で繭から糸を引き出した糸をよこ糸に使用したシルク100%の薄手の布です。この布からはまずストールを作りました。肝心なのは染める色です。
こちらは自分たちの染め場で、日本向けのオリジナルの色を染めました。とても良い仕上がりで、帰国後何人かに見せたところ大好評でした。座繰りによって紡がれた糸は、適度な撚りが掛かっているため、布の表面に少し凸凹した表情が生まれます。それが微妙な風合いを生み出します。この布は、よく知られた光沢があるタイシルクよりこなれた風合い。それでいてちゃんとシルクの艶感と質感が、感じられる、とても日本人好みの素敵な布に仕上がっています。この布からは、さらにシャツやブラウスを作っていくことにしました。
このように、ネパールで初めて、ネパール産のシルク糸を布にし、洋服に加工して輸出するという計画に、いよいよ着手しました!
このネパールシルクという団体は、二人の優秀な女性が会社組織としてネパールにシルク産業を根付かせて女性の雇用を拡大するという目的で運営しています。しかし、まだストールと石鹸、ボディタオルなどの小物の開発に留まっていました。しかし、これからはネパールで縫製を行っているORIENTAL GATE がネパールのシルクを服に加工し、まずは日本へ。そしていずれは需要のある市場へと届ける役割を担っていきたいと思います。
ネパール産のシルクは、ネパールという国にとって大きな可能性の卵だと思います。理由としては、一つ目に手で糸を紡ぐという作業自体、日本で馴染みのある紬(つむぎ)は今や文化財に値する希少な労力であり、高価な着物としてしか流通していません。しかしネパールにはまだ潜在的な紡ぎ手は沢山存在します。機械紡ぎ、織りのシルク布とは真逆の個性を持つ、ネパール産手紡ぎシルクには、洋服の分野で大きな需要が待っているかもしれません。
二つ目は、かつてJICAのプロジェクトが残した技術によって日本と同じ種類の蚕を使って作られた繭であることです。私がネパール在住の時から知る、養蚕の専門家、製糸の専門家などが10年以上の時をかけて残した技術をどうしても無駄にしたくありませんでした。長年の思いが実り、ようやくORIENTAL GATE というブランドとして、このシルクを活かして世界に届けるという夢が実現するのです。長年続けてきて良かったと心から思っています。
希少価値が高い唯一無二のシルクの布を、ヒマラヤンシルクと名付けたいと考えています。正真正銘、ヒマラヤを望む村々で養蚕農家が育てた蚕ですから。
ヒマラヤンシルクの商品は、8月から再開するポップアップから徐々に販売をスタートしていきます。是非、お楽しみになさってくださいませ!